熊って怖いですよね。野営に憧れているけど、熊が怖くてなかなか山で野営ができず、ひたすら熊についての情報を集めていたら、いつのまにかかなりの知識がついたのでまとめておきます。
次のような方にぜひ読んで頂きたいです。
- 熊が怖くてキャンプや野営がなかなかできない
- 山でキャンプや野営してきたけど、熊のことあんまり考えてこなかった
- 熊なんて会わないっしょ ← 読んでちょっとは知識つけてくれー!
※この記事では熊=ツキノワグマのこととしてお話しています。
本題の前にこの記事の立ち位置について
僕はキャンパーであり、この記事の内容はキャンプや野営で山に踏み入ることを前提として考えたものになっています。
これからお話する熊対策知識まとめは、命を張って実証してみたわけではないことを先にお伝えしておきます。
しかし、命にかかわる内容のため、かなり時間をかけて自分が野営をするうえで納得できるまでとことん調べ、信頼性として次のことを意識しました。
- 信用できる情報か?を徹底
- 情報発信元が信用できるか?を徹底
- 1つの情報だけでなく裏付けとなる情報も調べ判断
- 情報元を確認頂けるよう極力リンク貼ってあります
熊の情報を調べていると多く聞く、実際に熊に遭遇した人の話。
彼らの言うことには食い違いがあります。
Aさんは〇〇をして助かったのに、Bさんは逆のことをして助かった、といったようなものです。
僕の解釈としては、AさんもBさんも、その時はたまたま上手くいっただけで、次同じことをしても上手くいくとは限らないことなので、あくまでも事例の1つとして捉えるレベルであり、出会う前にとことん熊の特性を調べ、対処法を考えることが大切だと思います。
熊についての基本知識
日本には2種類の熊が生息しています。北海道にヒグマ、それ以外の地域にツキノワグマです。
ヒグマとツキノワグマ
ヒグマ:
- 体長:1.8m~3m
- 体重:250kg~500kg
- 食事:大小哺乳類、魚類、果実、稀に人間も
- 冬眠:11月~3月
ヒグマはかなり大きく、戦ってどうにかなる相手ではなさそうですね。
紹介はしましたが、この記事ではヒグマについては考えていませんのでご注意を。
ツキノワグマ:
- 体長:1.2m~1.8m
- 体重:40kg~120kg
- 食事:果実、芽、小型哺乳類、昆虫、動物の死骸、稀に人間も
- 冬眠:11月~4月
体長も体重も、ほぼ人間と同程度といえます。ただ、筋力は熊のほうがあるため、素手で戦うのは無謀ですね。
参考サイト:
Wikipedia
環境省kuma_2.pdf
季節による違い
冬眠・繁殖期による影響で、体重や攻撃性が大きく変わります。
- 春(3月・4月):
冬眠直後で空腹のため食料目当ての攻撃性が高い。
しかし冬眠で体重が落ちており力も若干落ちている。 - 夏(6月~8月):
繁殖期で興奮ぎみ。
タケノコをよく食べるためタケノコ狩りの事故が後を絶たない。 - 秋(10月・11月):
冬眠直前で食い溜めのためにやはり攻撃性が高い。
栄養をたっぷり補給しているため体重も力も一年で最も高い。 - 冬(12月~2月):
冬眠のためまず遭遇しない。
しかし冬眠していない熊がいる可能性もあるため油断禁物。
参考サイト:
ツキノワグマの基礎的な生態の理解 東京農業大学森林総合科学科 山﨑晃司
ツキノワグマの繁殖
活動時間
早朝と夕方の、薄暗い時間が特に活発なようです。
基本的に日中に活動しますが、人が多い地域では人との遭遇を避けて夜行性になる傾向があるようです。
キャンプ場など人が多い場所では夜の遭遇率が高く、野営などで山奥に踏み入る場合は日中の遭遇率が高いといえます。
参考サイト:
石川県ホームページ ツキノワグマの生態
熊の遭遇率と死亡事故件数
何年もキャンプをしていても1度も熊を見たことがないという人がいるほど、熊に遭遇することはまずありません。
また、野営をする人は結構熊を見かけることがあるようですが、大抵の場合は襲われることがありません。
さらに、襲われても逃げ切れる人、撃退できる人が大半で、そのまま殺されてしまうことは稀なようです。
熊による死亡事故も、全国通して1年に1件程度となっています。交通事故で毎年4千人前後が無くなっていることを考えると、山にいるより街中にいるほうがキケンなんじゃないかと思えてくるほどです。
死亡数の参考サイト:
環境省 クマ類による人身被害について
ヒグマが人を襲う原因と対策
熊と遭遇しないようにしよう
さて、ここから具体的な熊についての対策の内容になっていきます。
誰もが口をそろえて言うように、最も意識したい熊対策が、熊と出会わないようにすることです。
事前に熊の出没情報を調べる
山に行く時には、事前に熊が出没しないか情報を収集しておくべきです。
もちろん、出没情報が無くてもまだ目撃されていないだけであって、熊が出ない保証はないのですが、確率論的にこの事前調べでリスクをかなり下げることができます。
県別リスク→ https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/injury-qe.pdf
熊出没マップ→ https://www.sankei.com/life/photos/140619/lif1406190027-p1.html
地域別の判断材料として、キャンプ場やキャンパー、近隣の人への聞き込み、熊出没の看板の有無などがあります。
冬眠時期にキャンプ・野営をする
熊は基本的に12月~3月は冬眠しているため、この時期が最も安全だといえます。稀に冬眠せずに活動している熊がいるとはいえ、確率としてはかなり低いです。
食料を持ち歩くのは危険
食料は熊を惹きつけます。特に甘い香りの食料は危険です。
熊は鼻がかなりよく、数キロ先でも匂いを嗅ぎわけると言われています。
参考サイト:
宮城県公式ウェブサイト ツキノワグマってこんな生き物です
ジップロックなどで密閉しても、匂いは漏れています。基本的に、食べ物は持ち歩かない、テントからは100メートル以上離れた場所に保管するべきです。
ですので熊対策として理想的な野営は、テントを張って、そこから100メートル離れた場所に調理場をつくり、さらにその両地点から100メートル離れた場所の木に食料を吊り下げることです。
参考:
ヒグマの会 ベアカントリーの心得
野営キャンプの心得え、本場カナダの熊対策③つ!え?歯磨き粉も。。
どちらもグリズリー対策ですが大変参考になります。ツキノワグマ対策でここまでの対策をしている情報が無いのは、ツキノワグマレベル(ヒグマの10分の1程度の大きさの動物)でここまで念入りに警戒する必要が無いからなのか?という疑問は残ります。。
焚き火を活用する
大抵の動物は本能的に炎を恐れますが、熊は炎を恐れません。知能が高く炎の性質をある程度理解していると考えられています。
とはいえ、熊に焚き火は意味が無いかというと、そうではありません。
熊は鼻が利くため、焚き火の強い匂いを嫌う傾向があるためです。
参考書:
音で人がいることを知らせる
多くの人が思いつく熊対策の1つが、鈴やラジオなどを身につけて常に人間がいることをアピールすることではないでしょうか。
確かに、熊が人間を早い段階から気づいてくれる可能性は高まるのですが、デメリットもあります。
- そもそも人間を餌だと思っている熊を引き寄せてしまう
- 自分の近くで常に音が鳴っているため周囲の気配に気づきにくくなってしまう
そのため勝手に音が鳴るようなものではなく、定期的に木を棒で叩いて音を出すなどのほうが安全だと思います。
また、鳴らす音も、熊にとって聞き慣れた音ではないほうが、「なんかよくわからないけどこわい」と思わせて遭遇するよりずっと早い段階から逃げてくれるようです。
参考サイト:
ヒグマの会 ベアカントリーの心得
周囲に気を配る
熊が人を襲ってくる最も多い状況が、お互いかなり接近するまで気づかずに鉢合わせてしまい、熊もパニックになり自己防衛として人間を襲う、という状況です。
タケノコ狩りをしている人が熊の遭遇率・死亡率が高いのも、タケノコに意識が集中しており熊が近くにいても気づかないことが理由としてあります。
そのため、山で行動する時は常に、周囲に熊の気配がないか気をつけ鉢合わせないようにすることが大切です。
ちなみにタケノコは熊にとっても好物のため、遭遇率が高い原因にもなっています。
参考サイト:
毎日新聞 タケノコ採り中にクマ襲撃多発 「命懸け」の入山なぜ?
テント周りには結界を張る
結界といっても、魔法とかそういうものではありません。(笑)
テントから数メートル圏内にパラコードなどを張り巡らせ、熊が接近したら気づけるようにしておくことで、寝ている間に襲われる、といった事故を防ぐことが目的です。
これ、完全に僕のオリジナルの方法で、他にこの方法をやっているという情報はありませんでした。
しかし熊は夜目も利き、夜でも行動する可能性があることから、寝込みを襲われる可能性も考えなくてはいけないと思います。
何故か熊対策情報は日中山を歩いている時の情報ばかりで寝込みを襲われるという想定のものは無かったのですが、実際に寝込みを襲われた事例が海外ではあるみたいです。
→Camping teen awakens to 'crunching sound' as bear bites his head
熊と遭遇してしまったら
最大限熊と遭遇しないために手を尽くしても、100%遭遇を防げるわけではありません。
そのため、遭遇してしまった際の対処法も考えておく必要があります。
してはいけないこと
熊と遭遇した時にこれをやったら死ねます。
- 死んだフリをする
→熊は死体も食すため死んだフリしたら食べられることも。 - 背を向けて走って逃げる
→熊は逃げるものを反射的に追いかけます。それも時速50kmの速さで。 - 餌をあげる
→少量では満足してくれないでしょう。味をしめて他の人が被害にあうことも。
平和的に立ち去ろう
熊と遭遇してしまっても、すぐに攻撃されるわけではありません。大抵の場合はその場を離れれば何事もなく立ち去ることができます。
参考:
クマに遭うこと3000回、私はこうして助かってきた( 日本ツキノワグマ研究所理事長 米田一彦 )
事前準備:まずは武器を取り出そう
できれば平和的に立ち去りたいのですが、熊は個体差が激しく想定外の行動をとってくることもあるため、もしもの時のために武器を取り出しておきましょう。
できれば鉈(なた)がいいですが、ナイフしかない場合はナイフでもなんでもいいです。
戦略1:立ち尽くす
熊に遭遇した時、30メートルとかある程度距離があるのであれば、立ち止まって熊が過ぎ去るのを待つのは最も安全で効果的な行動だと思います。
ただ、もしこちらが熊の進路を塞いでいるような立ち位置なのであれば、熊に背を向けないようにしながらゆっくりと道をあけましょう。
戦略2:ゆっくりと後ずさる
数メートル~50メートルくらいで遭遇してしまった時、背を向けないでまっすぐ後ずさることで距離をとります。
熊もどうすればいいか混乱していることが多いため、刺激しないように距離をとることで熊も落ち着きを取り戻し逃げてくれることが期待できます。
ただ、後ろを見ないで後ずさるのはなかなか難しいです。
後ろの状況を目で確認しなくてもある程度把握できている時しかしてはいけません。
後ろを見るということはその間無防備なわけだし、後ろを見ないで後ずさってコケたらマウントされて終わりです。
撃退しよう
熊との距離が近く、立ち去ることが困難な場合や、まさに襲われている場合に撃退をこころみます。
事前準備:まずは武器を取り出そう
まずは武器を取り出して、熊が襲ってきてもなんとか反撃できるようにすることが大切です。
この時取り出している動作の最中に襲われないように、極力熊を刺激しないようにゆっくりと取り出すことを意識しましょう。
戦術1:大声を出して威嚇する
熊が人に警戒しないで接近してしてくるような場合は体を大きく見せながら大きな声を出して威嚇します。
熊に「ヤダこの人コワイ」と思わせることができれば撃退することができます。
ただ、至近距離でこれをやってしまうと反射的に反撃されて返り討ちにあう可能性があるので注意です。
戦術2:物を投げる
人間を無害だと思って接近してくる熊には、牽制が必要です。
大声を出してもダメなら、何か物を投げて物理的ダメージを与えることで「ヤダこの人無害じゃないわ~」と思わせることができれば撃退することができます。
ただ、頼みの綱の武器を投げるわけにはいかないので、投げれるものが無い状況のほうが多いとは思います。
参考サイト:
男女4人食った「凶暴グマ」のおぞましい実態
戦術3:持っている武器で戦う
これは最終手段になります。ここからは、死を覚悟のうえで行動する必要があります。
熊と戦う
前省で最終手段として取り上げた、熊と戦うという選択肢。
熊と戦うのですから、運が悪ければ死ぬ可能性だってあります。
それを前提に考えてもやはり熊と戦う以外に道が無い時は、もう覚悟を決めて戦いましょう。
倒すのではなく撃退できればそれでいい
熊と戦うというと、現実的じゃないと否定する人が多いですが、まさに熊に襲われそうな時、生き残るには戦う以外道は無いんです。
それに、熊を倒すとか、そういう話ではありません。あくまでも撃退(熊に逃げ出させる)できれば十分という話です。
熊はそもそも臆病な生き物なので、一撃でも痛がるような攻撃を当てることができれば逃げていくようです。
刃物で戦う
刃物というと原始的な感じに聞こえますが、実際に咄嗟に取り出せて頭が真っ白な状態でも直感的に戦える刃物は強いです。
槍
熊は前後の動きに鈍いため、理想的なのは槍による攻撃です。
昔の熊狩り人(通称マタギ)は弓や火縄銃が主武器だったため、これらが外れるとフクロナガサというナイフに棒を刺して作った槍で戦ったそうです。
一人で山を歩く時などは槍を持てなくもないですが、そんなことをしていたら転んだ時に自分に刺さったりするリスクのほうがよっぽど熊と遭遇するより高いかもしれません。
鉈(なた)
キャンプや野営で普段から槍を携帯するのは現実的ではないため、現実性を考えると鉈がいいかなと思います。
熊撃退スプレー
痴漢スプレーの強化版で、タフな熊にも効くようにチューニングされています。
ただ、使い勝手にクセがあるため、使い慣れていないと咄嗟に使うことはできないかもしれません。
熊撃退スプレー 中型 ホルスター付 (全国の複数の国公立機関・地方自治体正式採用品) B-609-CS
メリット:
- 5メートルまで有効射程があるため接近しなくても攻撃可能
- 風上だと牽制としても効果的
デメリット(リスク):
- 風下だと射程が短くなるだけでなく自分がかぶってしまう可能性あり
- チャンスは一度きり
- 意外と噴射の衝撃が強く訓練していないと制御できない可能性がある
実際、熊撃退事例では熊撃退スプレーより原始的な鉈(なた)のほうが件数が多いのも事実です。
マウントされてしまったら
熊に上に乗っかられてしまったら、あとは引っかかれ、噛まれ、死ぬまでそれが続く可能性が高いです。
こうなってしまったら、槍も鉈も、リーチが長すぎて使えません。そんな時、片手で扱えるナイフが1本あると、何度も熊を刺すことができれば生還できる可能性が出てきます。
そのため山に踏み入る時は鉈だけでなくナイフも腰につけていきましょう。
参考書:
最後に
熊について一通り調べ尽くした今でも、やはり熊は怖いです。
やはり、確実な対策というのが確立されていないことが大きいといえます。
今後も熊についての情報が得られるごとに、この記事を更新し続けようと思います。